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砂の中を歩く感覚を確かめる。
熱せられた砂が靴の底を溶かして行くようだ。
一息のたびに体温が上昇するのを感じる。
照りつける日差しに目を細めて、輝夜は彼方に揺らめく陽炎を見つめた。
見渡す限りの砂地を熱風が駆け抜けて行く。
太陽は強く降り注ぎ、命の存在を許さぬように。
世界が砂に埋もれた後唯一残された最後の楽園、鶴山城の外壁前である。
外壁から100mも歩けばアンドロイドが地質調査の為に砂を集めていた。
「輝夜様」
アンドロイドの久梨がこちらに気付いて駆け寄って来る。
その表情はアンドロイドらしからぬ嫌な物を見つけた、という顔だ。
「また来られたんですか。衛兵には輝夜様を通さないように言っておいたんですが」
小さく溜息を付く久梨に輝夜は楽しげに微笑んだ。
「たまにしか出られないんだからいいだろう。見てるだけだ」
そう言って座り込もうとする輝夜に他のアンドロイドが即席の影場を用意する。
「真琴を呼んで来ます。どうせまた真琴が来ないと戻られないんでしょう」
悪態をついて城へ戻って行く久梨を見送って、輝夜は影場に腰を下ろした。
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