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「そんな仮面はずしたら?素直になれば?」
「…いいの?」
「クスッ、いいよ。」
「夜道は怖いの、送ってくれる?」
涙で濡れた睫が震えている。その涙をそっと拭ってあげると、オレを見上げてくる。
「その目は反則」
「え゛っ?」
瞼をパチパチとする。そんな仕草も、可愛く感じる。
彼女の手をとり
「ホテルはどこ?」
「ロイヤルホテルまでお願いします」
顔を赤らめて、俯く。
「何号室?」
「1105号室。でもホテルの入口までで大丈夫だから。
ジフンさんだって、早く帰らないと明日遅刻しちゃう」
「わかった。じゃあそうさせてもらう」
夜道を手を繋いで歩いた。
男の人からと言うより、今までリツコ以外の人に、きちんと私自身を見てもらえた事がなかった。
両親でさえ、
「お姉ちゃんはしっかりしてるから、大丈夫ね」「あなたは強い子だから安心だわ」
ずっとそう言われて、甘える事さえできなかった。
それは、亮に対しても同じで、彼だけが悪いんじゃなくて、素直になれなかった私自身のせいでもある。
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