拡散するプロローグ-1.01

2/4
前へ
/4ページ
次へ
「つまり、そーゆうことにゃ」 「つまり、どういう事ですか?」 「つまりは…」 「また今日も始まりましたね。」 そう呟きながら、ボクは楽しそうに何かを語る猫耳青年…に見える女性を見つめている。 今は午後三時。昼食の時間帯は既に過ぎ、ボクが働く執事喫茶「徒然猫」の店内にはティータイムを楽しみに来た数人の御主人様たちしか居ない。 故に店内は閑散としていて、あまり御主人様たちから指名が入らない。言わば暇な時間帯なのだ。 そしてボクの目の前で語る猫耳女性は、暇つぶしのためにボクと会話…もとい、ボクに何やら妄想を語っていると言ったところなのだろう。 「…と言うことで、今日はどっちが人気かをハッキリさせるのにゃ!」 「唐突ですね。どうやって決めるんですか?」 「それは…」 どうやら考えて無かったらしい。腕を組んで唸っている。と、フロアから指名が入る。 「しゃどにゃーん」 とある御主人様が呼んだのは目の前の彼女、店では「シャドウ」という名札を着けていて「しゃどにゃん」やら「影猫さん」などの愛称で呼ばれている。因みに本名は「猫神 御影」。中々に珍しい名前だと思う。しかし、そんなことより彼女について特筆すべきは、"本物の"猫耳と尻尾が生えているということだろう。紛れも無く本物の耳と尻尾…それ故に人外だということが容易に想像できる。彼女自身も認めているし。 「はいにゃー?」 呼び掛けに反応して直ぐにモードを切り替えてシャドウはフロアに出て行った。これでやっと開放される。毎日この調子なので疲れるが、数日前に珍しくシャドウが休んだ時、この暇つぶしが聞けなくて少し寂しい思いをした。どうやらこんな無駄話でも、ボクの生活の一部となっているらしい。嬉しいやら、悲しいやら。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加