好奇

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 五月の日差しが窓から差し込む。今日は日差しが強くて、少々汗ばむ程度に熱い。だが今日は妙に涼しい風が吹いていて、体感的にはちょうどいい塩梅になっている。  教室内は各々好きにグループを作って昼食を摂っている。俺は窓辺の席に座りながら、一人で昼御飯を食べていた。  ティッシュ箱よりも少し小さい程度の弁当には卵焼きや、しょうが焼きなどのおかずが詰まっており、おにぎりを片手に箸でそれを摘まむ。  だが俺の食事の時間は、教室の中心辺りに固まって話し込んでいる女生徒達の慎みの欠片もない話し声により、実に苛立ちを覚えるものとなっていた。 「……喧しい」  誰にも聞こえない程度に、俺は小さくぼやく。移動すればいい話なのだが、一度腰を据えた以上、動く気にはならなかった。  なにをそんなに騒がないといけないのか。  俺は女生徒達の会話に聞き耳を立てた。話題は、煌明高校で噂になっている『学校裏の祠』について、というものらしい。  夏が近くなれば怪談話も自然と沸いてくるものだが、俺はそういう話にあまり興味がない。幽霊なんてものを信じていないから、所詮創作話にしか思えないからだ。  わざわざ聞いてしまったが、つまらない話だな。  だが俺の意思とは無関係に、女生徒達の馬鹿でかい話し声が耳に入り込む。
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