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祠が常に人目に触れないようにされていたのなら、今のご老人世代は祠の危険性を知っていたのかもしれない。
旧校舎の火事にも巻き込まれず、祠は残ったまま。そして当時の校舎移設の際にも壊されたり、祠の移設自体はなかった、もしくは意図的にされなかったのだとすれば……。
「昔から祠は避けられてた、と考えていいよな?」
「うん、そうだと思う」
「おいかみ、だったか? どういう存在か分からないが、昔から恐れられていたのは間違いなさそうだ」
「こうして、私たちみたいに神隠しに遭う人が後を絶たないみたいだし、相当に良くないものなんだろうね」
実際、おいかみとやらに関係するかは分からないが、動く手にも遭遇したんだ。やはりここは、いわゆる普通の世界ではない。
どうやって脱出すればいいんだ。脱出する方法は、あるのか?
光が不安そうに俺を見つめているのに気が付いた。悩むのは後だ。まずは全員合流するのが先だな。
「すまない、話が長くなったな。そろそろ行こう」
「ううん、正人君と話せたお陰で少し楽になったよ。怖い話は好きだけど、実際に自分がこんな目に遭うと、やっぱり怖いよね。誰かと一緒に入れるのって、すごく安心するよ」
「俺も落ち着けた。さて、じゃあ職員室に――」
ズズズ、ズズズ。ズル、ズズ。
何かを擦るような音が聞こえた。気のせい? そんなわけがない。光も聞こえたようで、硬直している。
音がまた聞こえた。遠くない。いや、これは――かなり近い!
俺は咄嗟に、光を連れて保健室のベッドに潜り込む。懐中電灯を消し、ベッド周りのカーテンを静かに引いて、光と一緒に布団を被った。
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