異界

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「すごくなんかないよ。私は考えたり話してないと、落ち着いていられないだけだから。ごめんね、もう少し付き合って」  起きたことを深く考えないようにするのが俺の恐怖への対処法なら、光にとっては考えて分析し、言葉にすることが対処法のようだな。  理解できないものを理解できるものに置き換える。俺としては、その考え方がここでは危ういような気がするのだが。 「……光。あまり考えすぎるなよ。それと、話すときはなるべく小声でな」 「うん、ありがとう。それでね。確か、正人君には祠について軽く説明したよね?」 「祠は確か、江戸辺りからあって、祠の主に生け贄を捧げたことで赤鉄町になる前の村は栄えた、とかそんな話だったな。歌にだけ、おいかみの名前が出てきたとも言ってた」 「そう。正体は定かじゃないけど、歌の歌詞を見れば、おいかみには生け贄が必要だった。じゃあ、あの祠は今どうなってる?」 「朽ち果てて、自然の一部になりかけていたな」 「もう今にも崩れそうだったよね。そうまでなるってことはさ。もうおいかみ様への信仰は途絶えて、誰も手入れしていないからだよね?」 「そうだろうな。もしまだ信仰している人がいたなら、神隠しなんて――」  起きなかったのだろうか? 言葉にしかけて、疑問が浮かんだ。  そもそも、どうして神隠しが起きるんだ?
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