異界

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 少し話し込んでしまって足が止まりがちになったが、幸い何事もなく職員室の前に着いた。  戸が開いた形跡はない。おいかみが前を通ったのだろうが、腐ったような臭いは薄れている。ひとまず、周りは安全そうだ。  職員室の戸に手を掛けて、俺と光は職員室に入る。中には当然誰もいない。  入ってすぐ、机上に書類が散らばっている長方形の机が、横に繋がり並んでいる。奥にだけ縦に三つほど机が並んでいるのは、学年主任、教頭、副校長の席だ。内装は普段通りだな。  机の上の書類には、よくわからない文字の羅列がびっしり書かれている。パソコンも各机の上に一機ずつあるが、電源は入らない。  さて、分からんな。神隠しといえば、どうして祠からこの学校に転移させられたのだろう。おいかみと学校は関係性が見えない。近いことは近いが、昔から避けていたようだしな。  外の旧校舎といい、なにがどうなっているのやら。頭が痛くなるところだ。   職員室の廊下側にある棚を物色する。懐中電灯で照らしながら探すと、キーボックスを見つけた。鍵には名前の書いたタグもついているため、なんの鍵かは一目で分かる。 「理科室、理科準備室、音楽室、コンピュータ室、家庭科室、体育館に体育倉庫、放送室、視聴覚室……。これで全部か? 大した量だな」 「さすがにかさばるでしょ。半分持つよ」  光に理科準備室と理科室、音楽室とコンピュータ室の鍵を預けた。俺は残りをポケットに突っ込んで、光と共に職員室の出入り口に戻る。  戸の前に戻った時、急に首筋がむず痒くなった。うなじを手で押さえて立ち止まる。
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