邂逅

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「ありがとう。そうだよね。皆、無事だよね」 「無事に決まってる。全員で帰るんだ」  弱気な発言を光にするべきじゃない。今は不安を煽るような言い方はダメだ。嘘でも言い切れ。決めつけろ。  一利は足は速いが臆病な面が強い。この状況に竦む可能性が高いが、がむしゃらに動き回って俺たちを捜そうともするだろう。だから、最も危ない行動を取りかねないのは一利だ。  幸太郎は恵まれた体格があるとはいえ……。それが果たして、ここにいる化け物に通用するだろうか? 人間が対抗できる相手であればいいが、そうでないなら幸太郎の気性は裏目に出る。下手に喧嘩を売らないといいんだが。  そして、千尋。俺と光以外に状況を考察できるのはあいつだけだ。千尋が一利と幸太郎の二人と合流していれば、上手く二人を制御してくれるだろう。だが二人と合流していない場合、千尋はどう動くだろう。  あいつは良くも悪くも真面目というか、保守的な面がある。全員を捜すより、まずはここがどこで、一体なにが起きたのか。現状の確認から始めるはずだ。そして恐らく、無闇やたらに動くことはしない。安全の確認と頭の整理が終わるまでは、決して思い切った行動は取らないだろう。  合流していない最悪のパターンを想定すると、一利と幸太郎は間違いなく状況が分からないままで俺達を捜そうと動き回っている。千尋はどこかで動かず隠れていると考えるべきだ。  だがそう考えると、動き回っている一利か幸太郎は俺達と鉢合わせしてもいいような気もする。校内で会わないということは、旧校舎か林の中にいるということだろう。  希望を述べれば、千尋と合流済みであり、三人で慎重に行動している形でいてほしいが……。
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