邂逅

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 ちょっと待てよ。三人が旧校舎か林にいるとすると厄介だな。もし現校舎に向かっているとしたら、こちらにおいかみとあの速い奴がいることを知らないわけだから、鉢合わせする危険性がある。  どうにかしてこちらの状況を伝えたいが、今の俺達が唯一出来るのは――やはり自分の足で捜すことだけだな。  大声を出せば奴らを呼び寄せるし、暗い中ではライトぐらいしか視覚的に訴える手段がない。化け物より先に皆を見つけないと。  さて、ひとまずどこに向かうべきか。体育館が近いが、特別必要な物は浮かばない。強いて言うなら、バットぐらいだろうか。  スポーツ用品を武器呼ばわりするのはスポーツマンに申し訳ないが、今は状況が状況だ。使えるものは使いたい。ないよりマシだ。  しかし残念な話、バットはグラウンド脇の第二用具倉庫に仕舞われている。体育館の第一倉庫には、室内競技用のものしかない。バドミントンのラケットや、卓球のラケットでは頼りないし、かといってネット用の支柱は重過ぎる。武器にはなり得ない。  そもそもここにいる化け物に物理的な攻撃が通じるかも分からないし、持っていく必要性は今のところ皆無だ。  とりあえず、体育館と体育第一倉庫を開けて人がいないか確認した後、当初の目的通り、このまま二階に上がって鍵の閉まっていた教室を調べてみよう。  中に誰かいるといいんだが、いるとしたら一利か千尋だろう。幸太郎は自分で開けて捜しに行くだろうしな。  さっき開かなかった理科室は反対側か。西階段はすぐ目の前だが、体育館を開けたらこのまま戻り、放送室を調べてみるか。その後は東階段を上って、理科室を開ける。この流れでいってみよう。
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