邂逅

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 ふと隣を見れば、光もまた唖然とした様子だ。肩を叩くと、我に返ったのか慌ててこちらを向いた。 「光、この山を見て、なにか思い当たることはあるか?」 「う、うーん。分からない、けど……なんだか今までの怖い感じとは違う、よね? もしかしたら、出口ってことも……」 「出口か。可能性はあるな。危険がないとは言い切れないが、中を探ってみてもいいだろうか」 「うん、行ってみようよ。もしかしたら、こういうところに幸ちゃん達が迷い込んでるかもしれないし」 「よし、じゃあ行こう。まったく、本当に捜索が容易じゃないな……」  山側は明るいようで、日が差している。ライトを消し、鞄に仕舞っておいた。光も同様に消したようだ。暗くないところで使っても、電池の無駄遣いだからな。  目の前の道をなぞるように進む。景色は今一つ変化を見せない。  幹をくねらせたもの、まっすぐ伸びたものなど、形状が変わる木々が並んでいる。風で撫でられた木の葉がさざめく音が止まない。  ここはどこなのだろう。  率直な疑問だった。ここが異常な世界だとしても、一応は分かる場所ばかりだった。旧校舎があったが、あれだって見たことはなくとも光が知っている所だった。  だが、ここは俺も光も分からない。だから困惑する。誰かが知っている風景なのか。それとも、誰も知らない場所なのだろうか。  考えながらも数分ほど歩き続けていると、道が下り坂から平坦な道に変わったことに気付いた。そして拓けた場所に出ると、見覚えがあるものを発見し、足が固まった。  まず目に入ったのは池だ。木々に囲まれ、水面は赤い落ち葉で染められている。そして、その池の淵に――あの祠があった。だが、それはまだ新しい木材で出来ている。  にわかには信じられなかった。だが目の前にあるものこそ、俺達をこの世界に誘った祠だと直感的に悟った。
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