邂逅

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 ただ、俺達が初めて見た時は朽ちた祠だった。それなのに、目の前にあるものは素人目にしても真新しいと分かる。  これはどういうことだ? いや、つまり、そう。そうだ。俺達が見ているこれは、今のものじゃない。もしかしたら、出来たばかりの頃の祠なのではないか。  なぜ、という疑問はずっとあった。旧校舎があり、現校舎もある。その二つを囲むような林に、この山の存在と真新しい祠。過去と現在が混じっている。  仮説ではあるが、この世界は時代が滅茶苦茶に繋がっているんじゃないか。  様々な年代が、ツギハギになっている。それがこの世界の正体なのではないか? 体育館があった辺りが昔は山だったと考えるなら、体育館から山に出る、というのは突飛的な話じゃない。  体育用具倉庫の扉の向こうが、その場所の過去、つまり山だった頃と繋がっていたから、山に出たということなんじゃないのか。  我ながら何を言っているのだろうという気分になるが、それが目の前にある現実だ。理解の埒外の世界。それが今、俺たちが迷い込んでいる場所なんだ。 「とんでもないな……SFの世界にでも紛れ込んだのか、俺達は。これじゃあ、どこにどう繋がっているか判断できないじゃないか」 「どういうこと?」 「仮説だが、恐らく俺達は様々な年代が混じり合った世界にいる。昭和の旧校舎、平成の現校舎があって、江戸か明治か大正か……削られる前の山もある。真新しい祠もだ。 つまり、過去と現在が混じってしまっている。だから、その、体育館からこの山に来たように、教室からまったく別のところに繋がっている可能性もあるわけで……。 言ってること、分かるか? 自分でも何を言ってるのか分からないんだが、おかしくなったわけではないんだぞ。ただ、ここはそういうツギハギの世界なんだってことを伝えたいんだ」
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