邂逅

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「普通じゃないところにいるのは分かってるから、大丈夫。正人君の言ってることはちゃんと伝わってるよ。でも、その、困った――としか言えないよね。どうしよう、どうしたらいいんだろう? こんなところ、どうやって動いたらいいの?」  光は慌ててはいないものの、混乱しているようだ。確かに困ったことになった。俺と光が出会えただけでも奇跡的だろう。  捜索範囲が広いなんてレベルじゃない。どうやってこの広い空間の中、三人を捜せるというんだ。  いやいや、悲観的になるな。まずは簡単に調べられる校内を見て回るのがいいだろう。今は足を止める方が問題だ。考え込むだけ安全な場所でもない。  そうだな、まずはこの祠の側から離れるべきだろう。真新しい祠だが、新しくとも祠は祠。神隠しの中心となったものだ。迂闊に調べようとして、おいかみを呼び寄せる羽目になったら最悪だ。今俺達がいる場所的にも、どこに行けばいいのか分からない山の中では分が悪い。  待てよ。そうだ、もし過去と繋がっているのなら、どこかにおいかみの情報がある可能性もあるんじゃないか? 祠に関しては、それが分かってから調べても遅くはないだろう。 「光、一旦学校に戻らないか? まずはどこまで広いか分からない山の中より、調べやすい校内から探すべきじゃないかと思うんだが」 「うーん、それは危ないんじゃないかなあ。あそこにはおいかみらしいものもいるし……。この祠、まだ新しいよね? 正人君の言う仮説が正しいなら、ここは色んな年代が混じってる世界でしょ? 新しい祠がここにあるってことは、この祠がなぜ作られたのか、おいかみとはなんなのかっていう疑問が、ここで分かるんじゃないかな。 祠の位置から考えて、きっと人の住んでいるところも近いと思うの。そこでおいかみのことが分かれば、対策とか、帰る方法の手掛かりになると思わない? 私はこのまま、先に進んでみたい」 「おいかみのことは重要だが、皆を捜す方が先決じゃないか?」 「幸ちゃん達は心配だよ。だけどもしここから戻ったとして、また同じところに繋がる保証はある? ここは絶対おいかみの謎に迫れる場所だよ。この機会を逃したら、もう知る機会がなくなるかもしれない。それにこの先に誰かいるかもしれないよ?」
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