邂逅

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 興奮気味に話す光の瞳が、妖しく輝いていた。今の彼女は好奇心が強く出ている。元々オカルト好きな彼女にとって、おいかみという謎の存在を知れるチャンスなのだろう。探求心と言ってもいいが、どうも変なところで火が点いてしまったようだ。  いや、だが確かにおいかみのために作られた新しい祠があるのなら、ここにおいかみについての情報はあるかもしれない。それに、一度出たら同じところに繋がらなくなるかもしれない、との懸念もその通りだ。  虎穴に入らずんば虎子を得ず、と言うし、ここにおいかみの情報があるかもしれないなら、探っておくほうがいい、か? 千尋達の内、誰かがいる可能性もなくはない。  問題はまったく知らない場所だから、襲われた時の対応に困ることか。いや、勝手が分かる校内に戻っても危険はある。分からない所を動くより、見知ったところのほうが動きやすいかと思ったのだが、それは少々日和った考えだっただろうか。 「わかった。ただし、危険を感じたらすぐに引き返すぞ」 「うんうん、さすが正人君! 早速行こうよ!」  山道をそのまま歩いてきたわけだし、帰り道は分かる。ただ、背後から迫られると帰り道を塞がれるから、後ろには注意をしておいたほうがいいな。  そう考えて振り返った時、変な音に気が付いた。そのざわめきは、明らかに茂みを掻き分ける音に違いなかった。  何かが近付いてきている。  俺は身構え、進もうとする光を掴んで背中側に寄せる。音は間近に迫っていた。緊迫している空気に触発されたのか、全身の筋肉に力が籠った。  音が間近に寄った。枝を踏み折る音、乱暴に落ち葉を蹴り上げる音。些細な音すら判断出来た。  動く影が見えた。茂みから飛び出したのは、俺達と同年代の人間だった。はねた髪の男、一利だ。 「一利! 無事で――」 「逃げろぉ! あいつが、あいつが来る!!」
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