邂逅

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 それはあまりにも醜悪で、歪で、嫌悪の体現のようなものだった。  幾百の人間の形をした肉が積み重なるようにして、膨れた体に張り付いている。人肉の塊は泡立ったように膨れ、溶けるように崩れながら形を作っていった。  丸太のような腕が生え、肉の合間から大きな頭が覗く。筋肉のように見える肉のうねりは、心臓の鼓動の如く間隔を空けて収縮と弛緩を繰り返した。それは象ほどの大きさに収まると、人の腕と頭が生えた、肉塊のなめくじのような姿にとどまった。  おいかみの下半身は余分な肉の集合のようだ。足になりそこなった部分は機能していないのか、おいかみは腕の力だけで体を支えている。  少女の面影などない。眼孔から半分飛び出した、瞼のない剥き出しの目玉が二つ。鼻柱は太く、鼻孔が大きい。耳の下まで裂けた口の中には、不揃いで汚ならしい歯が並んでおり、口、頬、顎には髭が生え揃っていて、それらは怒り逆立っている。  何より目を引いたのは、頭髪のない、歪に膨らんだ瘤だらけの頭だ。瘤にはそれぞれ人の顔が浮かんでおり、その顔は苦痛に喘いでいるかのようだ。  醜悪な怪物の吐息は生臭い。保健室で、光と一緒に嗅いだあの腐臭に似ている。  これが、おいかみ――?
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