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「俺、少しだけ部屋から出るけど一人で大丈夫か?」
「うん、大丈夫。行ってらっしゃい。」
純白のドレスを身に纏う私に向かって優しく微笑んだ彼の姿が、ドアの向こうに消えた。
「……はあ、」
一人になった部屋の中で深い溜息をつき、彼が出て行ったドアから視線を逸らした。
「雨止まないかな……、」
ソファーから立ち上がり、ドレスの裾で躓かないように気をつけながら、ゆっくり歩いて窓際に辿り着くと、霧雨が降り続いている外の景色を眺めながら一人呟いた。
私、どうして溜息なんてついてるんだろう。
今日は、最高に幸せな時間を過ごせる日なのに。
雨が降ってるから憂鬱な気分になるのかな?
もしかして後悔してる?
逃げ出したい?
彼を愛してないの?
ううん、そうじゃない。
私は彼の全てを愛してる。
だから、後悔なんてしないし逃げ出したりしない。
今日は、神様の前で彼に永遠の愛を誓って世界一の幸せ者になるの。
だって、ずっと夢に見ていた彼との大切な結婚式だから……。
水沢理奈(ミズサワリナ)25歳。
霧雨が降り続く今日、久遠修二(クドウシュウジ)君のお嫁さんになります。
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