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「よし。じゃあ力の元、身体の中に入れて少し練習してみようか?向こうに帰ってからじゃちょっと遅いかもね。」
「はい!」
伶薙はそういって、全てのカードを身体の中に入れた。
「透視は直ぐに出来たんだけど、他のも直ぐに出来るとは限らないわ。でも諦めないでね?」
露華はそう言うと、伶薙から少し離れた。
「耳は少し置いておきましょう。此処ではあまり判別がつかないからね。先ずは手のカードからね。」
「はい!…手から衝撃波…」
そう言いながら伶薙は、試しに先程直し損ねた本へと手をかざす。
…何も起こらない。
「…(何で?何も起こらないんだ?)」
だがその疑問も直ぐに解決する。
伶薙は下ろした手を額に付けたくて手を勢い良く上げたときだ。
その勢いと同じ勢いで本が上に飛んだのだ。
驚きで動きが止まる。すると本も空中で止まる。
「(…もしかして手の動きが発動原因?)」
伶薙が下に手を下ろせば、本も下へ落ちる。
「(やっぱり!)」
気付けば簡単だ。落ちている本を動かし本棚の中に入れる。
「あら?物を動かす魔法ね?確か水華も同じ魔法を持ってたわね…というより水華は殆どの力を使うけどね;」
そりゃあ何せ魔王と神の娘ですから。
「後は植物ね。伶薙くん。此処に何でも良いから植物を出してみて?」
「はい!(…って何がいいかなぁ…)」
その時、伶薙はある記憶を思い出した。
それは水華と初めて会った時の事だ。
『…ねぇ…これあげる!あささいたの!』
そういって渡されたのは…
「(…確かスノー・ドロップ…)」
とても寒い朝だった。水華は冬に咲く花が好きだった。
今でも冬になると霧澤家の庭には、白い小さな花が咲き誇る。
伶薙は目を瞑り水華が好きなあの小さい花を思い浮かべた。
すると伶薙の足元に小さな白い花が咲き始める。
「成功ね!これは…スノー・ドロップ…?」
露華もまた思い出した。
よく結婚する前に万樹が露華に白く小さな花を贈った事を。
結婚して人間界で暮らすと決まったとき、万樹は
『庭をスノー・ドロップで埋め尽くすぞ!』
等と言っていた事がある。
「(あの時は水華が別のも見たいって言ったからそうはならなかったけど。)」
それでもスノー・ドロップを植えていた。
「(また見たいわ…)さあ伶薙くん帰りましょ。」
「はい!」
…出来ることなら皆で笑い合いながら…
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