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ヒコにゃんは顔を俯かせ、口を吊り上がらせながらも続けた。
「わたしには二つ上にょ兄がいまして、あにゅは私とは逆で才能と自信に満ち溢れた人で、よく兄と比べもにょにされてました。
…兄は昔から、わたしにゅはちゅめたく接していました。大体が無視されていたので気にはにゃりませんでしたぎゃ……数週間前………兄に言われたでしゅ…」
『貴様のような恥さらしの妹に本家の土地を踏ませているくらいなら、いっそ追放した方がマシだ』
「……無表情で言われちゃいました…兄さん……に」
俯いたまま肩を震えさせて、ヒコにゃんは大粒の涙を流していた。
次第に泣き声に嗚咽も混じりだし、いよいよ聞き出せなくなった頃に俺はヒコにゃんに近付き、彼女の小さな頭を撫でた。
美智以外の女性にはやった事がなく、少々恥ずかしくなりつつも手を止めることはしなかった。
「そっか……辛かったな」
ヒコにゃんは相変わらず顔を俯けたまま俺の胸にその頭を沈めた。
その時俺は何となく雰囲気的な感じで彼女を抱きしめた。
一瞬ビクッと肩が跳ね上がったが抵抗はなかった。
抱きしめたまま背中を優しく叩き、励ましの言葉をいくらか囁いてヒコにゃんを落ち着かせようと試みる。
だが言葉を吐く度にヒコにゃんは強く泣いて俺も困って泣き出したくなった。
ステラは既に寝てしまっていて、孤立無援の状態になったワケだ。
俺はこれ以上なんて言えば良いのかサッパリわからなくなり、あとはほとんど抱きしめていただけだった気がする。
そっからどうして俺のベットに移動したんだっけ?
まさか感極まっちまって過ちを犯してしまったり?いや、いやいやそれはない。もし本当にそうだとしたら記憶に残っているハズだからな。
だとしたら何だよ?
そもそもヒコにゃんは当初どこで寝ていた?最初からここにいたか?それとも居間で寝ていたのか?
「キヨト……やはりこのどろぼーねこ…」
「いや殺すなよ?」
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