俺の天使と下撲が修羅場すぎる

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まさかと言わんばかりに、驚いたと言うような表情をして反論するヒコにゃん。 「ちょっちょちょってくぢじゃしゃい!」 「ワケわかんねぇよ!?何て言いたいんだか伝わらねぇから却下だ却下」 「あぅぅぅっ!にゃんにぇわきゃらにゃうのでじか!」 「テンパり過ぎなんだよお前が!」 ヒコにゃんの特性は、焦ると呂律が最悪って言葉が生温いくらい崩壊的に悪くなる。 最も悪いって表現が生温く感じるのはもはや限界点を突破したからだろうか。 ヒコにゃんの小さなその口から出てくる言葉とは言い難い、数々の呪文のような声を聞く俺達は、その呪文の意味を理解出来ずにいる。 リムですら嫌な物を見るような目になっているくらいだ。ステラなんて顔を横に向ける始末だし。 ヒコにゃんはそれを見てまた情けない声を出して泣き出しそうになる。 「ふえぇぇぇ……ぎょじゅじゅんじゃま゙ぁ…」 その情けなく泣くヒコにゃんを見兼ねたステラは、ため息を漏らしながらも質問を投げ掛ける。 「……では、何故あの時……いえ。何故昨晩は、キヨトと共に寝たのですか?」 うむ、どストレートだ。まあそう聞かなければ始まらないのだが。 わかってはいるのだが……ヒコにゃんをいじるのが思った他楽しい。 「うゅぅ…。きにょうは…昨日は、ごゆゆんやまが…」 「どこの力士だよ……んで、俺が…」 俺が言い終えるより前に、ヒコにゃんは頬を赤くしながら小さな声で呟いた。 「……ごしゅじんしゃまが…いっちょに寝てもいいって、言って……くれたんだもん…」 小さく顔を横に向けながら消えそうな声でそう呟いたヒコにゃんの、八の字になった細い眉毛と細くなった瞳を見て……こう、キュンとした。 まるで純情な乙女のような仕草が、普段あまり見なく耐性の脆い少年のハートに矢を刺した。 「んなわけないだろぉ」 すぐに引っこ抜いて射返しましたが。
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