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ステラは俺への忠誠心や(中略)を向けてくれているから、俺の心変わりにショックを受けているだろう。
だからステラはもう心の中ではヒコにゃん=天敵みたいな構図が完成しているに違いない。
そうじゃないとしても、ステラはヒコにゃんをあまりよく思っていない。
それは今朝の一件がきっかけだ。だが、そこから連鎖的に昨日の待ち伏せの件を掘り出されたらまたまた面倒臭そうになる。
だから、無用な火種はすぐに消すに限る。………のだが。
「……あなたは…どろぼーねこ、です」
「うゅぅ……わたしはどりょびょーねきょじゃありましぇん!」
時既に遅し。二人は睨み合いながら口をへの字に曲げ、その綺麗に整っている、所謂美少女顔を崩して残念なことに。
でもヒコにゃんはどんな怒った顔をしても弄りたくなる。これはもはや自然の節理と言うべきか。
台所ではリムが美味しそうにドーナツ……って、あれ?
何でかな……リムが悲しそうな顔をしてドーナツを………違う。
違うぞ……アレはリムの大好物のドーナツではない。
あれは……
「……抹茶味…だと?」
馬鹿な……何故抹茶味のドーナツなんかが我が家の冷蔵庫に入っているんだ?
その答えは意外にもすぐわかった。
「あ!わたしのまっちゅ味!」
どうやらアレはリムのドーナツではなく、昨日来たばかりのヒコにゃんのドーナツであったらしい。
リムはキッとヒコにゃんを睨むと、手に持っていたドーナツをヒコにゃん目掛けて投げ付けたのだ。食べ物は大切にね、モグモグ。
「あーっ!…パクっ」
投げられたドーナツの軌道上で大口を開けて待機したヒコにゃんは、そのほとんど手の付けられていないドーナツを、まるごと口の中に入れてしまったのだ。
口を閉じると歯を動かし、もっしゅもっしゅと幸せそうに食べる。
なんとも美味そうに食べるな。と感心を抱きつつ、リムには食べ物は粗末にするなと言い叱る。
何て言うか……俺って保護者みたいだよな。
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