俺の天使と下撲が修羅場すぎる

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「行ってくるな、馬鹿天使と抹茶猫!」 その後、リムご所望のドーナツがチョコレート味から抹茶味に変わっていたのを怒り、俺の腕を引っ張りながらドーナツを買いに商店街へと行くハメに。 リムはぷんすかと怒りながら俺の手を子供とは思えない力でグングンと引っ張って行き、あっという間に俺は我が家から数十メートルほど引きずられていたのだった。 ああ……俺の尊い休日がぁぁぁ…………。 嘘人が家を出て行ったちょうどその頃。 須田家はジェラシーの炎に包まれた。 世紀末救世主伝説なら間違いなく救世主である、七ツの傷を持つ男が現れてもおかしくない。 しかしながら、現状須田家にそのような救世主はいなく。ヒャッハーとかヒデブとか言うモヒカン達すら驚愕するほどの嫉妬……否、殺意に満ち溢れていた。 その殺意の発信源がこのドミニオン級天使、ステラであった。 彼女はとある事情から人間界に舞い降り、須田嘘人を護るという役目を課せられた、ただの天使。 強いて言うなら致命的なアホであるということくらいだ。 今彼女の全身から放出される殺気は全て、彼女とは対の位置に座るヒコにゃんこと氷心皐に向けられている。 その理由は言うまでもなく。ステラにとって嘘人の貞操は命の次に守るべき大切なもの。 一度きりの人生の一度きりの初めてを、皐のような得体の知れぬ女に大切な嘘人(マスター)の操を捧げるワケにはいかない。 というのもステラ自身の思想であり、嘘人の意思は視野の中に入れてはいない。 つまりは嫉妬(ジェラシー)。得体の知れない者に自分の命よりも大切な主を奪われたくない。 そういった従者の理想。それによる自然な思考の反射行動。 それが今のステラの殺気である。 意識しても抑えられない殺す気のない殺意。 自然界で言う威嚇によく似た行動である。 それに対して皐の取った行動は 「お茶、飲みゅましぇんか?」 マイペース。 相手を自分のペースに引き込む天然の武器。 それは思考回路の予測を遥かに上回る、まったくの盲点を突く事がよくある、まさに最強の武器。 流される事はなく、流す時は適当に周りを巻き込む。 それは普通なら最強の武器となるが ステラは幸運なことにアホの娘であった。
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