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それにしてもだ、この尻尾…のようなサイドテール。さっきからパタパタフリフリしていて可愛くのだが……。
パタ
ピシッ
パタ
ピシッ
さっきから俺の腕に当たってるんだよ。
別に痛くはないんだ、逆にくすぐったいくらい。
リムのサイドテールはどうやらリム本体から分離した生物みたく、コイツの意思とはまったく関係なく動き回るらしい。頭の上だけで。
くすぐられながら俺は帰路を、少し早く歩く。
リムは歩幅が小さいが結構テクテク歩くから、俺が無理して合わせることはしないですむ。
歩く姿はまるで兄弟。だが髪の色を見れば一目瞭然、手を引っ張ってたら誘拐だと思われかねん。
たとえ妹と思われたってコイツが反発して、結局お前は何なんだ、みたいになるだろうな。別にいいけど。
「うまいな、やっぱしうまいぞコレ!どうしてこんなに美味しく作れんだろ?」
「…職人技とか…機械的な云々とか…」
「きかいてき?何だそれ?きっとこのドーナツ作った奴は、カッコイイ奴だったりカワイイ奴だったりするんだろうなっ」
何故容姿で料理の腕前が左右されるんだよ。あのレジの裏の厨房で、オッサンが頑張って作ってたのをお前は見なかったのかよ。
哀れオッサン。だがドーナツは美味しく頂くぜ。
心の中で、汗水流しながら買って行く人々の笑顔の為に、ドーナツや菓子を作り続けているナイスガイなオッサンに、敬礼をしながらようやく俺は我が家に帰還したのだった。
しかし、帰還した俺を待っていたのは思いもしなかった事件だった。
「……ヒコにゃん?」
玄関を開けてすぐの所で、ヒコにゃんが俯きながら膝を着いて泣いていた。
ヒコにゃんの手はギュッと閉じられていて、震えていた。
まるで悔しがるように強く強くく握った拳を震えさせていた。
「うぅ…っく……」
「おおい、無視か?聞こえてるんだろ?」
「…く、うぇ……ゃにが…」
「?」
皐は顔をガバッと上げて、涙で歪めた表情で嘘人を一瞥して
「ぅぅうあにがあきゅましゃんをうびゃっていぎまじゅだぁぁぁあ、うぁぁぁぁぁっ」
嘘人の胸に縋り付くようにして泣いた。
「……ステラが、何だって?」
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