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数分前の須田家。
皐とステラ、二人が拳一つほどもないくらい近くまで顔を寄せ合っていた。
二人は特にこれといった、所謂恋仲とかではなく、ただ単に何かに目覚めかけてるステラが皐に顔を近付けているだけである。
腹の底から沸き上がるようなその感覚が何なのかを知りたくて、皐の胸の鼓動が吐息が感じられるまで近くに近付いた結果がこれ。
「……ヒコ…にゃん」
「はわ、わ……あきゅましゃ…………ん?」
そして事件があったのは、その瞬間だった。
「…ミイラ取りがなんたらとは正にこれか。
心底幻滅したぞ……皐」
次の瞬間にはステラは何かしらの特別な封印術式とやらで捕縛されて連れ去られてしまったらしい。
後を追おうとした皐にも束縛術式を用いられて拘束されてしまい、身動きが出来ないまま連れ去らて行くステラを、ただただ目で追う事しかできなかったらしい。
『お前は既に用済みの身。もう我が家の敷居を跨ぐなよ』
その言葉を吐き捨てて、ヒコにゃんの兄貴はどこかに消えたらしい。
実の妹を蔑んでさらにステラまでもを拉致しやがった。
「…っぐ…ふ、うぇぇ…」
「……馬鹿天使の奴…連れてかれちまったって……な、なあキヨト」
俺は突然のこの事態に対応しきれていなかった。むしろ混乱している。
あのステラでさえ一瞬で拘束する人間がいた事への驚愕から、何故ステラを奪って行ったのか。
そしてその兄貴が行動に出る早さ。まったくもって人間離れしていた。
一つ一つ頭の中で整理をし、徐々に冷静さを取り戻して、まず聞くべきことをヒコにゃんに問いただしていく。
「……皐。お前の兄貴の居場所は?」
だが、やはり冷静さが欠けていた。
「っ……聞いて、どうじゅんでしゅか…?」
「決まっている。取り戻しに行くんだよ、その馬鹿兄貴からステラを」
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