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「……わたしのせいです」
やがてヒコにゃんは重く閉ざしていた口を開ける。
だがそこから出された言葉は、さらに自分を追い込むものであった。
「……わたひが、甘えて着いて来てしまったのが悪いんですっ。あにょとき、いっちゅんでもこの人ならわらひを必要としてくりぇるかもしれないって……思っちゃったから…でひゅ」
「甘えた?」
一つ頷く。そしてから顔を少し上げて言葉を続けた。
「わたしのきょとを下撲って、ごちゅじんさまは言いました。しょの瞬間わたしは思ったんでしゅ。
この人はたしゅけをひちゅ要としているんじゃないか。
って、です。だからわらし…ごしゅじゅんしゃまに着いて行ったんでしゅ」
「……」
意外だった。ヒコにゃんが俺にそんな期待をしていたなんて。下撲になれとは言ったが、下撲が欲しいとは言っていない。
つまり誰かの助けなんか、最初から俺は必要としていなかった。
だがしかし、彼女はそんな淡い期待を俺に寄せていた。
力になりたい。必要とされたい。
彼女の思想から、そんな感情が読み取れた俺は無粋な真実を言えなくなり、自然と口から言葉が漏れた。
「よく俺に着いて来てくれた……一応、礼は言っておく」
「…?でも、わらひのせいであくみゃしゃんは…」
「だからっ。お前には十二分に働いてもらう。もちろん、俺だけの下撲てしてだ」
俺はヒコにゃんの頭をワシワシと強く撫でた。
強く撫ですぎたせいで髪が乱れ、ヒコにゃんはそれを嬉しそうに直していた。
緩やかな笑みを浮かべながら。
――次は~梅田(うめだ)~梅田駅~
……着いた。
――梅森山へ観光の方はこちらでお下りください
ヒコにゃんの故郷にて謎の郷土信仰の総本山、梅森山に位置する梅森神宮。
遥か昔に建設された社を今もなお修復などを施しながら使っているらしい。
社までの道のりは一直線。
道の両手の梅畑に歓迎されながら、ただひたすら山を目指すのみ。
途中曲がり道があったり町民の家屋を見掛けたが、まったく人の気配を感じられなかった。
「…な、なあヒコにゃん。ここって本当に人が住んでるのか?」
とリムも不安がる。
これにはヒコにゃんもただ首を傾げてるしかない。
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