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「おかしいでしゅ…。まだ夕暮れでもないのに、人の気が感じりゃれません…」
「普段はどんな感じなんだ?」
「普段みょしょれほど人を見きゃけるようなことはありませんにょ。子供が駆けてたり、おじいちゃんやおばあちゃんが作業をしていたり……まあ、いなきゃですから」
と、普段よりも人気がないらしい。
俺の爺さんの家もかなりのど田舎にある。それでも道を歩けば人を見掛けることはできた。
だがここはまったくない。廃村にでも迷い込んだ気分だ。
ヒコにゃんは周囲を隈なく見渡し、近くにあるサッカーボールを発見して持って来た。
子供がよく遊ぶのだろう、ボールには泥や擦り減った跡が沢山あった。
「ヒコにゃん、それは?」
「はい、サッカーボールでし」
「見りゃわかる。それがどうしたんだ」
「はい…このサッカーボールなんですが、一部の泥が新しいんでしゅよ」
そう言って差し出してきたボールを受け取ると、泥の感触が手に伝わってきた。
「この辺りは昨日雨が少し降っていたので、土が少し緩んでるんでしゅよ」
そう言われれば梅畑の方の土が少し濡れているように見える。路面にも小さな水溜まりがちらほらと見れた。
つまり、この状況から推察したヒコにゃんが何を言いたいかと言うと。
「ちゅいさきほどまで、きょどもたちがサッきゃーびょールで遊んでいた、と言うことでし」
放置された物ならそれほど泥を被る事などない。
それにこの乾き始めた土の上では、転がった程度では土汚れくらいしか付かないだろう。
蹴ったり投げたりしない限りは。
「じゃあじゃあ、その使っていた奴らはどこに行ったって言うのさ」
リムがヒコにゃんに聞きながら周りを見て、ヒコにゃんは「さぁ…」と言いながら、眼前に見えてきた長い石の階段を見上げた。
「……もしかしたら、みんな社にあちゅまっているのきゃも…でしゅ」
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