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わかったかっ!と指を差しながらビシッと言いきる。
我ながら中々の喋りであったと思う。自画自賛乙ってか。
「くっ……貴様…!」
「おぉ」
樹はさきほどの言葉に傷心したか、ギリギリと歯を剥き出しながら鋭い目で、刺さるくらい強く睨む。
口を大きく開き、喝が飛んで来そうな勢いで叫んだ。
「私はシスコンではないッ!!!!」
ブワッと覇気が広がった感じがした。と同時に、何か引っ掛かるようなモノも感じた。
樹は咳ばらいを一つして場を仕切り直す。
「…皐よ。お前の連れて来た仲間は…ずいぶんと愉快な輩だな」
不意に話しを振られたヒコにゃんは返事に躊躇った。
それを言った樹は嫌なくらいの殺気を纏っていたからだ。
「…は、はぃ。……私のごちゅじんしゃまは……優しくて…ちゅよい人、でしゅ」
視線を樹から逸らしてようやく言葉が出せるようになったヒコにゃんを見る限り、かなりの恐怖感を抱いているのが取ってわかる。
幼少からの立ち位置や言動、扱いなどで、憧れと恐れの両方の目で見てきたからか。
「そう、か。なら」
樹は足を翻し俺の方へと体を向けると、両腕に光の輪を作りだした。
「見ているがいい。お前に優しくしてくれた者が、壊れ行く様を」
それをその場から投げてくる。
高速の速さで迫り来る二つの輪を、俺は避ける術もなく両手首に当たり、背後の壁まで飛ばされるとその光の輪が壁にくっついてしまった。
「うわっ、動けねぇ!」
「拘束術'蛇'。これで貴様も立派な死刑囚だ」
俺は樹の話した最後に出ていたその単語の意味が、理解できなかった。
死刑囚?それって罪を犯して、その償いに死ぬ人のことだろ?俺が何か犯罪でも犯しました?まさか不法侵入とかじゃないよな!?
「兄さんっ?!」
「っくくく。儚い生涯も、せめて最期くらいは鮮烈に彩ってやろう。
さぁ、爆ぜるがいい」
樹の目は、もう人を見る目ではなかった。
その目に映る俺を、奴はどう思って見ているのか俺にはわからない。
だが次に、手の平に作り上げられた炎の玉を見た時
あぁ、俺は今から死ぬんだな
と、悟った。
避けられるハズがない。防げない。返せない。
詰みだ。
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