思わぬ場所で

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御礼を用意すると、「そんなのはいいから店を手伝ってくれ」といわれた。 ちょうど3人いっきにやめてしまったらしくて、人手が足りなくて困っていたらしい。 何の店だろうと簡単に考えてついてきたらこれだ。 ここは他の店よりも多少はしっかりしているようだ。 ひどい店だとホストから金をむしりとってやめさせられなくすることくらい当たり前だ。 幸い俺のオヤジ達の名前は相当威力があって、ちらりと匂わせただけで悟さんは「ああ、なら別に無理してここへこなくてもいいぞ。」と物分りのよい態度へと軟化した。 しかしそれでは俺の気がすまないので、それから1週間、毎日ここへ来てウエイターとして通っている。 客と絡むわけではないし、下っ端のホストたちと混じって食事の準備や配膳をするだけだけれど、ホールに出れば絡まれる事だってよくある。 馬鹿騒ぎが嫌いじゃないが、こう毎日、それも好きでもない人間を相手にするのは本当に疲れる。 それでも、恩を感じている俺は明日まで頑張るつもりでいる。
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