思わぬ場所で

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はじめさんはため息をひとつ吐いて、車のドアに手をかけた。 「‥あ、まって。」 俺は降りようとするはじめさんの顔に近づいて、そして唇を寄せる。 「‥む‥」 「百年早いよ、ボクちゃん。」 俺の唇にはさっき買ったコーヒーの缶が押し付けられた。 「キスくらいいいでしょ、足代わりのお礼‥」 「勝手に送るって言ったのそっちでしょ。文句言わない。」 「ちぇー‥」 はじめさんはちょっと口の端を持ち上げるだけで笑って車を降りた。俺の車は左ハンドルだから、歩道側にある運転席のドアへとはじめさんが身を寄せてくれた。 窓を開けて「また連絡頂戴ね」とへたくそな投げキッスすると、はじめさんは俺に右手を差し伸べてきた。しかも手の甲を見せ付けるように。 「‥‥‥‥?」 なんのつもりだろう。俺はきょとんとしたら 「唇は百年待ってもらうけど、手の甲なら承ってもいいよ。」 かなり上からのその言葉に、意地悪な微笑み。
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