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ベテラン店員はもう一人を呼んで、二人で同じような靴を探していたようだ。
その空いた時間がもどかしくて、ちらりと彼女を見ると、彼女は携帯を開いてなにやら操作中。
それは、俺に話しかけるなってポーズなんだろうか。
横顔を見ながらそう思う。
まつげの長くて、目も大きい。
髪をゆるくカールしてあって、ワックスか何かで形を無造作に整えてあって。
ふと足元を見ると、細くて折れそうな足首が伸びていた。
「まだ名前も言ってなかったよね、俺は響っていうんだ。」
俺はいてもたってもいられなくなり、言葉をかける。
「そう。」
そっけなく言われて、少しへこむが、負けずに話し掛ける。
「字はね、音響の響。面倒な字だけど、結構気に入って‥」
「いっぱい喋られても覚えられない。」
「あ‥そう‥。」
彼女は迷惑そうに鼻をフンと鳴らした。
失敗したみたいだ。
実際そんなに押せ押せに攻めたこと無い俺が、タイプの子だからと思ってがんばったのに。
「あたしは、はじめ。」
8割の反省と2割の反発感を持っていたその時、彼女はそう言った。
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