夏が連れてきた運命

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私は青空三号から下り立ち止まった。 坂の上からの景色は私のお気に入り。 振り返れば今まで苦労して上って来た坂道を見下ろし、その坂の向こうには私達の町がよく見える。 そしてもう一度振り返れば、私の視界には広大な海が広がる。 よく晴れた今日みたいな日には海の向こう側にある違う国の島が見えるんじゃないかしら?なんて思えちゃう位に壮麗で果てしなく続く海。 穏やかな風に乗ってやって来る磯の香りと鮮明な青い色は何度もここに通っている私の目にも未だに鮮やかに写ってしまうのだ。 再び私は青空三号に乗ると一気に海岸へと続く道路を下り出した。 この道路は海岸に面した海をグルリと半周回る様に作られており、その途中には海水浴を楽しもうと訪れた人達の為に多数の駐車場が設けられていた。 夏真っ盛りのシーズン、今日も客の入りは上々だ。 この道を更に真っ直ぐ行くとその先には灯台があり道はそこで行き止まり。 極楽道の坂を下り、海を囲むこの道路は誰が呼んだか[眺海道(ちょうかいどう)]。 完全に当てた名前だがこの海を眺めるには絶好のポイントらしくこの名前が付いたらしい。 しかしまぁ…どうしてこの町は道に名前を付けるのが好きなのかしら?と常々疑問に思う程いたる道路に名前が付いている。
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