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「何か聞こえた気がするけど気のせいかしら……」
特に悪びれる様子もなくピンバッチを配る霧島。存在自体を否定したいんですね、わかります。
「ははは……」
苦笑いを零した俺達は、霧島から受けとった十字架の形をしたピンバッチをブレザーの胸ポケットにつける。
改めてよく見てみたが、十字架の中心には小型のレンズが備えられていた。これを通して映像を送るんだろうな。
「さて、準備はいいな? 1、3班は俺について来い。樹海に入るぞ」
そう言うと、小さい体は背を向け先にある樹海へ向けて歩き出す。
それに続いて1班の連中が先生を追い掛ける。
「……あ」
こちらに向かって手を振る長身の男に気づいた俺は一瞬嬉しさが頭を過ぎったがすぐに険しい表情へとなる。
そういや大輝も1班だったな……。昨日大輝が物凄い勢いで大剣を振り回していた姿が嫌でも頭に浮かんでしまう。
とにかく挨拶を返さないのは失礼と感じた俺は軽く右手を上げて彼に答える。
大輝はそれに気づいたのか、ニッコリと笑ってから前を向き、歩き続けた。
そんな大輝を見続けていたら後ろから声をかけられた。
「俊、早く行かないと遅れるよ?」
「あ、あぁそうだな。てか、みんな先行ってるし……」
後ろにはずっと待っていたのか香苗しかおらず、再び前を向いてみたら先を歩いている霧島達を見つけた。
「わりぃ! 急ぐか!!」
「うん!」
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