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薄暗く、視界が悪い樹海の中を歩き始めて数分が経過した。
神経を研ぎ澄まし、相手を探る俺達は、自然と無言になっていた。
あのリカまでもが金色の瞳を光らせ、闇に動く者がいないかと真剣に辺りを警戒している程だ。
音を漏らすのは俺達が歩くたび踏まれる木の葉がカサカサという音をたてるのみ。
『俊、真っ直ぐ近づいて来てる団体がいるよ!』
そうか、ありがとな。
「霧島、近づいて来てるみたいだ」
「……そう」
霧島は俺の瞳をしばらく見てからは小さく呟く。
「いい? さっき言った作戦どうりに動くのよ?」
クイッと左手の中指で眼鏡の位置を修正した霧島だが、その指が微かに震えていた気がした。それが武者震いからか、緊張からかは判断しようがないのだが。
「うん、美鈴ちゃん頑張ろうね!」
「なっ!? 美鈴ちゃんって名前で呼ばないでよ香苗! しかもちゃんづけなんて恥ずかしいじゃないっ!!」
顔を真っ赤にして香苗に反論する霧島は見ていて面白かったし、何より新鮮だった。
まぁ、そんなこと口にしたらぶっ飛ばされるんだろうけど。
「いいじゃん~、そっちだって私の名前呼んでるんだし」
ニヤニヤと顔を緩める香苗は「ねー、美鈴ちゃん!」と言っていた。
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