深緑の人工樹海

36/68
前へ
/411ページ
次へ
――霧島美鈴―― 「はあ、はあっ……」 くっ、しつこいわねっ!! 速度を維持しながら、ちらりと後ろを見る。 尚も追いかけて来る忌ま忌ましい、白髪と黒髪の男が嫌でも視界に入ってきた。 「本当にしつこいっ!」 仕方なしとはいえ、何時までも追いかけて来る二人を一瞥し言葉を吐き捨てる。 自然と蛇神を握る手に力が入るが今は逃げに徹する。 こんな木々がひしめき合っている場所でリーチのある槍では逆に不利になってしまう。 それに二対一じゃ、歩が悪すぎる……、とてもじゃないけど勝ち目はない。 特に白髪の男……伊集院翼は多分だけど私以上の力を持っているはず。 「厄介な男に目をつけられたものね……」 深いため息を吐きながらも走る足は止めない。吹き付ける風が顔を打ち、生い茂る草の葉と同色の髪が風に靡いた。
/411ページ

最初のコメントを投稿しよう!

318人が本棚に入れています
本棚に追加