無頭蓋症

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大きい病院とやらはとにかく大きかった。 まだつわりもあって、身体がだるいというのに目的の場所には着かないし、着いたら着いたで初めてこの病院にかかるなら1階の受付で診察券を作ってからまた来いと言われた。 そんなんであちこち歩き回り、やっと診てもらえると思ったら実習生がぞろりと5人位並んでいるし、医師は私の方を見ないで話していた。 その空間が既に嫌だった。 『うん。この赤ちゃんはね、頭蓋骨が無いの。別に遺伝性とかはないから、次の妊娠の時は大丈夫。赤ちゃん、お腹の中では産まれるまで元気に成長するんだけどね、外に出たら生きていけないの。だからね、これ以上妊娠を継続していても無駄だから、処置をしましょう。』 つまり、中絶をしなければいけないということだ。 哀れむ顔でやたらと見てくる男の実習生に腹が立ったが、涙が溢れて何も言えなかった。
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