566人が本棚に入れています
本棚に追加
「…どういう意味だ」
土方さんが烝を鋭い眼光で睨む。
余裕の無い土方さんに対して烝は涼しい顔で土方さんを見据えている。
「そのまんまの意味や…恋歌、行くで」
「あ……うん..」
私は烝に手を引っ張られて部屋を出た。
烝に掴まれている手首が痛い。
部屋を出て直ぐ、土方さんを見ると…
「っ…」
目を瞑り、眉間に皺を寄せて苦しげな土方さんがいた。
『鬼と仏がおらん限りこの"新選組"っちゅー組織は成立せん…
そこん所、忘れん方がええと思うで…?』
意味ありげな烝の忠告。
理解出来ない程土方さんは頭が悪くない…
そう思いつつ、烝と部屋から離れて行くのだった…
─
ガンッ!!
手元にあった物を投げると、それは音をたてるだけで割れたりはしなかった。
コロコロ...
「…ちッ」
跳ね返ったものが自分の足元に転がってきた。
…どうやら湯飲みをだったらしい、割れなかったのは座布団の上に丁度落ちたからだろう。
座布団があったといえど、酷い音がした所を見るとそこに座布団がなければ確実に粉々になっていたと推測出来る。
「…クソッ!!」
俺はもう一度湯飲みを拾い上げ壁に向かって投げようとしたが投げ掛けたところで止めた。
『馬鹿』とでかでかと描かれた悪趣味の湯飲み。
…以前総司に貰ったものだ。
「鬼と仏…か…」
この湯飲みを見ると何もかもが馬鹿らしくなっちまう。
…渡した本人はまさかそんな事を思われてるなんて微塵も思っちゃいねぇだろうがな…
「ハハッ..」
馬鹿馬鹿しくなって軽く笑うと俺は湯飲みを元に戻した。
最初のコメントを投稿しよう!