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「くっ……」
手を止めさせれば時間と力の戦い。
…でも……
数ヶ月前まで普通の女子高校生をしていた私が小さい頃から鍛え上げられている歩さんに敵う訳がない…
例え現代で運動神経がずば抜けて良くたってそんなもの意味がないんだ。
現代剣道大会で優勝していたとしてもこの幕末で一番ということは絶対に無いということと同じ。
「う"っ」
抵抗はつかの間、私の疲れきった腕を軽々と捻りあげる歩さん。
「悪いけど私の勝ちやな」
…っ…!
私は悔しさに出てくる涙を耐えるようにギュッと目を瞑ると…
「…あまり和月さんを苛めないであげてください?しかし後方を取られるとは…まだまだですよ…?」
…!?
バッと目を開けて歩さんを見る。
歩さんは目を見開いて固まっていた。
そしてその後ろには…
「山南さん!!」
…歩さんの鉢巻きを持った山南さんがいた。
山南さんはニコリと微笑むと「…貴方の勝ちです」と言って騎馬の上から私の頭を撫でてくれる。
「っでも…」
一瞬顔が綻ぶが…
もし山南さんがいなかったら私は負けていたんだ。
…なのに……。
私が笑えずにあると歩さんがいきなり私の髪をグシャグシャしてきた。
「うわぁ!?;;ちょっ歩さん!?」
驚いた私は勢いよく歩さんを見る。
そして更に驚いた。
…歩さん…笑ってる…?
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