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暫く誰も口を開かなかった。
土方さんと烝の睨み合い。
殺気は出ていないものの、恐ろしく怖い。
私はただ汗をダラダラ流しながら正座で成り行きを見守るしかなかった…。
「...フッ」
さらに暫くして、土方さんが小さく笑った。
諦めたような、そんな笑い方だった。
「…山崎、お前変わったな……前はただ命令をこなすだけで茶化しながらも自分の利益か不利益かをしっかり計算してやがった。…和月がいなきゃ、お前は山南さんがどんな状況に置かされてようともこんなことは聞いて来なかっただろ?」
………え……?
私は烝を見る。
烝はいつの間にか目を伏せていた。
「…その通りやろな」
烝が独り言のように呟く。
「忍っちゅー面倒なもんは…ほんまは情なんてもんは要らん。ただ主の命令を冷酷にこなし、利益にならんと判断すれば何もしぃへん…」
「…じゃあ今のお前は忍失格だろう」
土方さんはそう言って烝を見る。
…ズキリと胸が痛んだ。
私のせいで…完璧な烝が土方さんに忍失格だと言われてるのだ。
「…っ」
私のせいで…
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