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コトリ...
「……フゥ…」
静まり返る一室に筆を置く音が響いた。
ジジッ..と蝋が終わりを告げる音を奏でている。
男は伸びをすると自分の隣に置かれている荷物を手に取った。
その中から一冊の本を取り出すとパラパラ..と軽く捲る。
詩の所々に線や繊細な字が綴られている
その繊細な字は、愛しい人が自分の為に綴ったもの…
そう思うとズキリと胸が痛んだ。
パラ...パラ...
暫く頁を捲っていくと何かが挟んであった。
「…………」
撫でるようにソレを触る。
四つの葉がついた不思議な草花。
いや、花なのかはわからない。
普段そこら中に生える草花などあまり気にしたことはなかったからかもしれない。
ふと、これをくれた少女が"願いを込めれば叶う"と言っていたのを思い出し、私はその花を手に取った。
─私の願いはただ一つ…
しっかりと願いを込め、その草花を再び本に挟む。
本を荷物に戻そうとするがピタリとその手は止まった。
「………」
パラパラ…
先ほどの草花を取り出す。
男はジッとそれを見つめると暫く考え込んでから草花を台の上に置き、本だけ荷物の中に戻した。
手持ちぶさたになり、ぼぅ…と与えられている部屋を見回すと無性に不思議な気持ちに駆られた。
「…………」
荷物を持ち、スクッと立ち上がると障子に手をかける。
これ以上何かをすると、決心が揺るぎそうになるのが怖かった。
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