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顔が見えないから山南さんが今どんな表情か読み取ることが出来ない。
私は苦笑いをして「実はお腹痛くて…」と言いながら目線を山南さんの手に落とす。
荷物らしきシルエットは無い。
少しだけホッとする
もしかして、私の見間違いかも…
「山南さんはどうしたんですか?」
そう言いながら顔を上げた時…
ガッ...
その安心が命取りだった事に気づく。
お腹に一発、重い山南さんの拳がストレートに入った。
「グッ...!!」
私は腹に力を入れ、受け身を取り、なんとか持ちこたえる。
「…な、に…するんです…か……」
山南さんは気を失わせるつもりだったのだろうが、女性という配慮からか手加減したように思える。
痛くて苦しげに顔を歪める私に、山南さんはため息を一つついた。
「申し訳ない…一発で気絶させてあげられば痛い思いは一瞬で済んだでしょうに…もう一発受けて頂くか、もしくは私を見なかった事にして頂けませんか?」
私は咳き込みながらも体勢を立て直す。
答えなんて決まってる。
そんなの…
「断ります!明里さんからの任務、そして私自身の想いのために…!」
明里さんという言葉に山南さんが明らかに反応する。
しかし直ぐに山南さんが構え直した。
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