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それだけではない、その時その場にいた全員が気付いた。
部長が『ブチギレ』ていることに。
眼鏡を押し上げるその手にも不自然に力が入っており、眼鏡をカタカタと揺らしている。
「お、お兄ちゃん……?」
「どうした、恋。」
「ひぃッ!?」
恋が情けない声を上げるのも無理はない。
妹だけには優しく笑いかけようとした彼の笑みは怒りによって不自然に歪められていたのだから。
「か、カーくん、何をそんなに怒っているのかな?」
「分からないか、佐奈。」
「ひいぃッ!?」
だが彼が笑うのを止めると更に恐怖が増すばかり。
眼鏡を白く光らせ、こめかみからは血管が浮かぶ。
「新井君は?」
「…………ぼ、僕にも……なんのことやら……サッパリ……。」
新井はその圧力に耐えきれず、ついには目を逸らせてしまう。
普段冷静な者が怒ると、とても怖い。
その真理を理解したのはこの場にいる部長以外の三人だ。
「それはな……。」
誰もが息を飲む。
そして部長の口から出された言葉は……
「奴らが『ティー』という名を使っているからだ!!」
「「「…………。」」」
どーでもいい理由だった。
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