1.放課後の怪談

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「あたしがこれから聞かせる話はズバリこれだ」 と、靖代は黒板にチョークを走らせる。 そこに書かれたのは“酒々井さん”の文字。 「さて木下。これはなんと読む?」 唐突に指名された鈴花はハッとした表情を見せたあと―― 「さけ…さかいさん?」 眉間にしわを寄せて答えた。 「残念――じゃあ我孫子」 まるで授業中のように、次に当てられたのは雅也。 しかし彼も「しゅしゅいさん」と答えて残念を食らう。 「他に、誰か読める奴はいないか?」 靖代の問いかけに教室内は静まり返った。 と。 「しすいさん」 教室の後方から声が聞こえて、全員がそちらを見る。 相変わらず姿勢を崩さないまま、月子がもう一度言った。 「しすいさん」 「神代、正解――これは“しすいさん”と読む」 全員の口から「おぉ!」と感嘆の声が上がる。 「なんか聞いた感じだとコックリさんやキューピットさんっぽいですけど」 そんな紅真理の言葉に、しかし靖代はかぶりを振った。
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