1.放課後の怪談

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昔々ある街のある家に、父親と母親と娘の3人家族が住んでいました。 父親はサラリーマン、母親は専業主婦、娘はまもなく幼稚園に上がろうかという年頃で。 彼らは決して裕福ではありませんでしたが、休みの日はいつもピクニックに出かけるような、とても仲の良い幸せな家族でした。 しかし―― ある日、父親はその幸せが偽りであったことを知ります。 いえ、或いはそれは最初から幻想だったのかもしれませんが。 彼が働きに出ている間、母親は娘の世話もロクにせず男と遊び歩いていることが発覚したのです。 それについて父親が問い詰めると口論になり、結果母親は家を出ていってしまいました。 ショックを受けた父親はしばらく仕事を休みますが、最愛の人に裏切られたという心の傷が癒えることはなく、やがて自宅で首を吊ってしまいます。 遺体が見つかったのは、それから2週間後のこと。 休みの期間を過ぎても彼が出勤してこないことを不審に思った同僚が家を訪れ、もはや原型をとどめていないそれを発見したのです。 娘は―― そう、娘は無事でした。 娘はずっと家にいました。 両親が口論していた時も、母親が家を出ていった時も、父親が首を吊った時も、それからも、ずっと―― 彼女を保護した警察官がある疑問を抱きます。 この2週間、少女は食事などをどうしていたのだろうか…と。 警察官の問いに娘は屈託のない笑顔で答えました。 「パパがね、とってもおいしかったんだ」     ◇  ◇  ◇
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