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その話を聞き終えて、間宮白は思わず言葉を失った。
いや、自分だけではない。
ちらり周囲に目をやれば、他のみんなも同じようにその表情を凍らせている。
唯一、教壇に立っている松崎蒼空だけが輝かしい笑顔をこちらに向けていた。
「どう?怖かった?怖かったっしょ、俺の話」
1学期の終業式が終わって、大半の生徒が帰宅した放課後の教室――
そこには自分や彼を含めて7人の生徒が残っていた。
ついさっきまではそのうちの6人で、明日から始まる夏休みの予定について盛り上がっていたはずなのだが。
どこでどう脱線したのか今は怪談話の発表会になってしまっている。
「いや、怖いって言うかぁ…」
最前列の席に座る聞き手たちの中で、最初に言葉を発したのは廊下側の木下鈴花だった。
「グロくてぶっちゃけドン引きなんですけどぉ」
うんうんと廊下側から2番目の新木翔太が彼女に賛同する。
「見ろよ、雅也なんか見ざる聞かざる状態だぜ」
彼が指さす窓際の席に視線を移すと、我孫子雅也は両耳を塞ぐだけでは飽き足らず、瞼すら閉じてガタガタと震えていた。
よく見れば、その口は小さく「南無阿弥陀仏…」と動いている。
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