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「結局ウケが良かったのは紅真理だけかよ」
と、壇上の蒼空が残念そうに言って――
「んじゃストーリーテラー交代だ」
「交代って、蒼空っちで最後じゃん。もうみんな1回ずつ話したっしょ」
そう返す鈴花に彼はかぶりを振ると、窓際の一番後ろの席に視線を向けた。
つられて、雅也を除く全員がそちらを振り返る。
そこには、夏であるにも拘わらず冬用の黒いセーラー服を着た女子生徒の姿があった。
神代月子――白の親友でもある彼女は、窓縁に頬杖を突いて外の景色を眺めている。
「神代、お前はなんかないの?怖い話」
蒼空の問いかけに、月子は姿勢を一切崩さないまま「ない」とだけ答えた。
「なんだよ相変わらずノリが悪いな。1個ぐらいあんだろ」
「ないものはない」
「怖い話じゃなくてグロイ話でも良いぞ」
「良くねえよ!」
と、すかさず翔太のツッコミが入る。
「って言うか蒼空っち、もう良いじゃん。神代さん興味ないみたいだしさぁ。無理に誘うとか迷惑くない?」
鈴花にもそう言われ、蒼空は渋々といった様子で「わかったよ」と頷いた。
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