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『――――であるから――――』
時間あれから少し過ぎ、現在進行形で入学式が行われている。
無駄に広い体育館の中、新入生用に並べられた四百はあろう新品なのか傷一つ無いパイプ椅子の一つに龍児は座っていた。
退屈なのか両目が覆われた顔はすこし気だるげに歪み、周りに気付かれない程度に溜め息を漏らす。
(暇だ……どうしてこうお偉いさんの話は長いんだ……少しは聞く側の気持ちを考えて欲しいものだ……)
現在話しているのはこの学園に寄付しているらしい肥えた中年男性だ、暖かな陽気は彼には十分に暑いらしい、額に滲む汗を何度もハンカチで拭いながらかれこれ三十分は話し続けている。
一体何をそんなに話したいかが龍児にはさっぱり分からない、話の中に幾つか貴族を自慢する様な発言があったからそれ以降は一切聞く耳を立ててすらいない。
とにかく早く話を終わることを望む龍児、その右肩を誰かにつつかれ龍児は気だるげにそちらに振り向いた。
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