『わたしの居場所』

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おぼつかない足取りながら、なんとか辿り着いたリビングのソファーに座る。 気持ちを落ち着けようと、大きく息を吸って吐き出した。 冷静に考えれば、お兄ちゃんが私を捨てるだなんて有り得ない。 あのパンフレットにもお兄ちゃんなりの理由があるに違いない。 はっきりとそう信じられる──しかし一方で、1度生まれた不安は消えない。 「あんなテレビ見ちゃった後だからって……」 良くない想像ばかりが浮かんできて、不安はどんどん大きくなっていく。 「お兄ちゃん……早く帰って来てよぅ……」 そんな私のお願いに応えるかのように、玄関の方から物音──鍵を開ける音がする。 そして、ドアが開く音。 少し間を置いてから「ただいまー」というお兄ちゃんの声が聞こえた。 「帰ってきた!」 いつもなら、お兄ちゃんの所へと飛んで行くのに、わたしは座ったままだった。 本当は、すぐにでもお兄ちゃんの顔が見たいのに。 抱き締めてもらって、その温もりを感じたいのに。 今、感じている不安を全部吹き飛ばして欲しいのに。 ──なぜか身体が動こうとしてくれない。 「……そっか」 わたしはお兄ちゃんに拒絶されるのを恐れているのだと気づく。 お兄ちゃんの事を信じているはずなのに──信頼と不安がごちゃ混ぜになっていた。 わたしが動けないでいる間に、お兄ちゃんがリビングへと入ってくる。 「あれ? やっぱり居たのか」 「──っ!」 本当に何気ない一言のそれが、まるで私を拒絶する言葉のように聞こえて──私は思わず、縋りつくようにお兄ちゃんに飛びついた。 「──っと。ただいま、ハル」 お兄ちゃんはそう言って、お兄ちゃんの胸に顔を埋めるわたしの頭を撫でてくれた。 撫でてくれる手から伝わってくるお兄ちゃんの温もり。 「…だ……やだよぅ……」 失いたくなかった──絶対に! 「……ハル?」 訝しむお兄ちゃんの声。 いつの間にか、わたしは泣いていた。
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