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「わたし…もっといい子にするよ?……お兄ちゃんの………いうこと………何でもきくよ?……だから…………だから──」
──わたしを捨てないで!
最後は嗚咽混じりなってしまい、一番伝えたい大事な部分なのに、上手く言葉にできなかった。
もう1度。今度はちゃんと言わなきゃいけないのに、泣いている場合じゃないのに、涙が止まらなくてどうしようもない。
だけど、そんなわたしをお兄ちゃんは抱き締めてくれた。
「大丈夫だから……ハルには俺がついてるから」
お兄ちゃんの手が、わたしの頭をゆっくり撫でる。
「落ち着いて、何があったか話してみな?」
お兄ちゃんに優しく諭されて、いくらか落ち着けたわたしは、さっきまでの事を話した。
テレビ番組の事。パンフレットの事。お兄ちゃんに捨てられてしまうんじゃないかと、不安で堪らなかった事を。
心の中の不安を全て吐き出すかのように。
「そっか。ごめんな、不安にさせて」
お兄ちゃんはわたしを少し引き離して、わたしの目を真っすぐに見て──
「たしかに、マイロイドをもう1人育てようと考えてるけど……春香はね、その子のお姉ちゃんになるんだよ」
「わたしが……お姉ちゃん?」
予想していなかった言葉に、わたしはきょとんとしてしまう。
「そうだよ。俺、もうすぐマスターレベルが50になるだろ?」
「うん」
それは知っている。お兄ちゃんは昨日、レベル49になったところだ。
「だから、2人目のマイロイドを育てる許可がもらえるんだけど……知らなかった?」
「…………うん」
知らなかった。という事は──
「じゃあ……わたし、出ていかなくてもいいの?……お兄ちゃんのところにいてもいいの?」
「当たり前だろ。ていうか、春香がいなくなったら、俺の方が泣いちゃうって。だから、春香が嫌にならない限り、ずっと俺の側にいて下さい」
なんとか止まっていた涙が、またぽろぽろと溢れ出した。
「ちょ、なんでまた泣くんだよ?」
「だってぇ~…嬉しくて……」
わたしはまた、お兄ちゃんの胸で泣いた。
だけど、さっきまでと違って──今度は心が暖かさでいっぱいだった。
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