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頭の後ろに当たるのは、虎次郎の意外と逞しい胸。
お腹に回っているのは、虎次郎の両腕。
離しなさい!! と、いつもの如く叱りつけようとしたけれど……。
私の肩に置かれた虎次郎の顔と、呟かれた声が震えていた気がして……声は喉の奥にと引っ込んでしまった。
何かに怯えているような……。
何かを危惧しているような……。
「お皿洗ってくるから」
不安を胸によぎらせていれば、虎次郎は簡単に離れてリビングに行ってしまった。
唐突な離れ方に表情は見えなかったけれど……私はしばらくその場から動けず。
何か、もやっとしたものが胸の底に溜まった気がするわ。
凛子ママに
虎次郎に
二人の不思議な謎かけめいた言葉。
胸の底に溜まったもやは……
今の私は知る術が無かっただけ。
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