〇〇〇、拾いました。

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「だったら親の家に帰ればいいじゃない」 「帰れないんだよね。俺さ、親父と大喧嘩しちゃって、家追い出されたわけ」 喧嘩……だって? 親と喧嘩、だって? ああ、懐かしい。 私も高校生の時はよくパパと殴り合いの喧嘩をして、家を飛び出していたもの。 でも行く宛ないからしばらくふらふらして家に戻って、早い帰宅だな、と馬鹿にされてまた喧嘩して。 そんなしょうもない理由で流血沙汰の喧嘩をしたものよねぇ。 親と喧嘩も青春の一つだと思うと、目の前の男子高生を放っておくなんて出来ない気が……してきた。 体を売る行為を止めるチャンスでもあるし、家事をせずチャンスでもあるし……。 それに、拾ったのは私なのだから、最後まで面倒を見るのが筋ってやつよね。 だったら……。 「分かったわ。ここに住まわせてあげる」 「マジ? やった!!」 人差し指を立てて了承した私を見て、虎次郎は小さく跳ね上がった。 でも、住まわせるからにはまだ条件がある。 「ただし、寝る時はキミはここで寝なさい」 「うん」 「食事は毎日三食必ずとること」 「うん」 「私の指示は絶対」 「うん」 「そして……私の好物のプリンを食べるな」 「うん」 「それらが守れない時は、即刻追い出すからね」 「うん」 全部快く頷く虎次郎。 こうして、私と妙な拾いものの生活は 始まった。
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