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「おはよう……」
「何でペットボトル? しかも空だし」
「ゴミ箱に捨てる為よ」
「へえ」
何だろうか。
私が寝ぼけて虎次郎を泥棒と勘違いするだけでなく、虎次郎自体を忘れていて、ペットボトルを武器代わりに立ち向かおうとしていたのを……。
見透かされた感じ。
誤魔化す為に空のペットボトルをべっこべっことへこましながら寝室から出て、にこやかな虎次郎が座るリビングにと寄った。
「勇ちゃんってさ、誘ってるよね。絶対」
「は?」
ソファーに座るなり意味の分からない質問をする虎次郎に、眉間の皺が寄った。
「性欲が盛んな高校生は朝とかヤバいんだよね。なのにそんな淫らな格好を見せちゃってさ。
襲っていい?」
「その前にこんな風に握りつぶしてあげるわ」
へこんだペットボトルを更にぐしゃりと潰し見せた。
「年下は恋愛対象外なの。キミがいくら発情しても、私はキミに応えないから。完全にね」
「そこまで言い切ると燃えるなぁ。
俺、勇ちゃんに一目惚れしちゃったし」
「あーりがーとございまーす」
一目惚れ、ですって。
耳が腐る程に聞いてきたその言葉に棒読みの感情のこもっていない、お礼の言葉を返すわ。
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