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一目惚れだなんてそんな言葉は、全く嬉しくない。
容姿を見てそれに気に入って惚れたということは、相手の中身を見ていないことになるじゃない。
絶世の美を持つ私がいうのも何だけど、容姿なんて飾りにしか過ぎない。
一番重要なのは中身。
人を形成しているのは人の意志や性格であり、つまりは中身なのだから、中身を見なければ人を見ていないことになる。
中身を知らないで表だけに捕らえられるなんて、失礼もいいとこ。
私に寄って来る男はそんな奴ばっかりで、虎次郎もその中に入るんだと分かると、朝から嫌な気分になった。
嫌な気分を少しでも紛らわす為にウッドテーブルに目をやれば……。
「私を殺す気?」
そこには白い部分なんて一ミリもない真っ黒な物体が、あった。
形は四角形だし匂いからして多分トーストだと思うのだけど……。
黒い物体にしか、見えない。
半眼になって虎次郎を見れば、学ランを脱いだだけの姿の虎次郎は困ったように笑っている。
「ごめん。料理って……出来ないんだ」
「は……はぁっ!? ちょっ、キミ一人暮らししてたんでしょ!? 昨日は出来るような感じで言ってたじゃない!?」
「徐々に出来るようになるかなーって」
勇の嫌な予感レーダー発動!!
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